2002/10/19  日本経済新聞 目次 / ホーム

シリーズ 政治家

財務省を辞め野中氏に挑む
 「うちも政治志向の連中は全部、民主党だ」。財務省の幹部が指を折り始めた。「5人、いや6人はいるんじゃないか」
 「財務省を辞めるとき『なんで民主党なのか』と上司や先輩から幾度となく言われた。しかも相手は野中(広務)さんだから」。自民党の有力者、野中広務氏の選挙区である京都4区から出馬する北神圭朗志(35)は野中氏の官房長官時代、財務省若手の登竜門といわれる「首相秘書官補」として官邸にいた。
 次期衆院選の公認候補として党から毎月50万円が支給される。事務所兼自宅のマンションの賃料は月8万円。人件費など必要経費を差し引くとほとんど手元に残らない。妻と二歳になる娘の生活費は、支持者のカンパと貯金が頼りだ。
 岡山2区から出馬する津村啓介氏(30)は今年六月、民主党の公募で選ばれた。日本銀行の考査局にいたが「都銀や地元のことしか頭にない族議員の反対で、物事が進まないのを見て、政治への思いが募った」。
 もっとも、かつてであれば自民党から出馬したかもしれない若手官僚らが、民主党の「魅力」に引きつけられて身を投じたとは言い難い。

「自民空きない」出馬は民主から
 伊藤忠商事の常務から昨年の参院選比例代表で当選した自民党の近藤剛氏(60)はクールにみる。民主党に人が集まるのは「自民党の政策理念とそれほどの差がない」のが第一。次に「自民党の選挙区に空きがないために『とりあえず民主党』から、という打算で立候補するケースも多い」。
 要は政界志望者の受け皿が増えただけで、政治家予備軍のすそ野はたいして広がっていない。英米では政治家が政党を渡り歩くことはめったにないが、日本では選挙区事情に応じて融通無碍だ。
 有権者の多くが無党派で、特定の政党の党員になることを望まない日本で、「政党」が政治家養成の中心になる日が来るのかも分からない。

休職制度の利用はゼロ
 そこで政界に人を集めるためには「サラリーマンが立候補しやすいように、落選した場合の『セーフティーネット』を整備するのが不可欠だ」と近藤氏は説く。
 「国会議員、都道府県会議員、市町村の議員等の公職に就任したとき、最長4年の休職を認める」。人材派遣大手のパソナは98年、こんな就業規則を設けた。同社グループの南部靖之代表は当時「経済のことを政治家に知られることが必要だ。もっと政治と経済は結びつくべきだ。優秀な企業人を政治の世界へ送り込む」と、その理由を説明した。
 それから4年、同社によると、これまでこの社内セーフティーネットによって選挙に出馬した社員はいない。

融通無碍 候補者あって政党なし


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