2004/3/8  Nくんへの手紙 号外目次 / 津村啓介ホーム

N君への手紙 「脳死問題」についての中学生への手紙

 
昨年12月、県内の中学3年生のN君から、お手紙をいただきました。

「立法(=政治)の果たすべき役割、その大切さ」を学ぶ過程の中で、特に「臓器移植法」をとり上げながら、立法に関する彼の思いを、彼自身が誰に手紙を送るかということも含めて、お手紙にしていただいたものです。

昨年6月には岡山である男の子が臓器移植を待ちながら20歳の誕生日になくなるという悲しい出来事もありました。

津村の思いをしたため、遅くなりましたが本日お返事いたしました。転載いたします。


N君へ

卒業おめでとう。

まだ会ったことのない君に慣れ慣れしくお祝いを言うのはおかしいけれど、去年の暮れに受け取った君からの手紙を読んで、僕は君が充実した中学校生活を送り、先生やクラスメートと密度の濃い時間を送っている姿を思い浮かべました。卒業のお祝いを兼ね、新しい門出への激励の気持ちを込めて、脳死についての君の問いかけに僕の言葉で答えてみようと思います。

君がT先生のご指導のもとで勉強した臓器移植法は、長い議論の歴史の上に成り立った画期的な法律です。この法律を待ちながら、大勢の方が亡くなった事実があります。議論の末にこの法律は、脳死が「人の死」であるのか「人の死」でないのかを、われわれ国民一人一人があらかじめ選択できることを定めました。あらかじめドナーカードによってその旨を表示しておけば、家族が拒まない限り、脳死判定を受けることができ、脳死を以って「人の死」とすることができます。また、ドナーカードを持たなかったり、あるいは拒否を書き込んでおけば、脳死判定をされることなく、心臓が止まるその瞬間まで生きた人間として扱ってもらうこともできます。言い換えれば「人の死」について2つの形を認めたわけです。ここが大きなポイントです。宗教的に比較的大らかで、多様な死生観を許容する日本の文化に適合した法律であるとも言われます。僕は、この問題が議論されていた当時まだ政治家ではありませんでしたが、「幸せをできるだけ増やし、不幸をできるだけ減らす」という意味で、ドナー(提供者)やその家族の意思を尊重しながらも臓器移植への道を開いた「良い法律」なのだと思っています。ただ、この問題は人工臓器の開発など、医療の進歩によって解決されていく可能性もあります。また、日本の文化や国民の意識も永遠に変わらないとは言い切れません。そういう意味では、脳死の問題はまだ未解決というべきなのかも知れません。

君の手紙には、子どもの臓器移植について慎重な意見が書かれていました。これも未解決な問題の1つかも知れませんね。日本は「児童の権利に関する条約」という国際条約を結び、批准しています。この条約は、子どもの人生に大きな影響を与えることがらについて子ども自身が意思表示する権利を認め、大人はそれを聞く義務があるという考え方で作られました。臓器移植の問題にもこの原則は当てはまるような気がします。つまり、子どもの意見を聞かずに親の判断のみで脳死判定や臓器摘出を行うのは問題だということです。また、君も書いているように、そもそも大人と子どもは医学的な見地からも色々な違いがあります。こう考えてくると、やはり、君の言うように「子どもの臓器移植は安易に行うべきではない」ということになりますね。僕も君の意見に賛成です。

ただ、一つだけ覚えておいてほしいことがあります。数学や理科のような自然科学は、ほとんどの場合、1つの明快な答えが存在し、それは永遠に変わりません。例えば1+1は昔も今もこれからもずっと2です。でも、社会科で習うことの多くは、立場によって答えが違うこともあるし、これからの人類の進歩によってより良い答えが見つかっていくこともあるということです。僕はその可能性を信じながら、現代社会の様々な問題や特徴を勉強し、自分の頭で考えてみることこそが、社会科を勉強する面白さだと思うよ。

僕は、去年の秋の選挙で選ばれて、中国地方選出の衆議院議員になりました。だからまだ1年生です。国の政治に関わるたくさんの問題やテーマを前にして、本を読んで勉強したり、頭を抱えて悩んだりすることも毎日のようにあるよ。でも、できるだけ多くの人の意見を聞き、自分の意見も伝えながら理解し合うことで、自分なりの答えを探すようにしている。現代社会の問題は、そうやって人と人とのふれあいやお互いを理解しあうことによって解決をしていくしかないと僕は思う。それが僕の仕事、政治でもある。

手紙だけでは伝わらないことも沢山あると思う。もっと君の意見も聞いてみたい。このテーマに限らず・・・、ね。 僕の選挙のキャッチコピーは「若い力。」だったけれど、君は僕以上に若く、可能性に満ちた年齢です。可能性こそ、若さの特権です。

自分の可能性を信じて、何にでも勝負を賭けて下さい!

迷った時、こんなアドバイスでもよければ、またいつでも手紙を下さい。
君のクラスメートにも、そう伝えて下さい。

平成十六年三月八日

衆議院議員 津村 啓介


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