財務金融委員会 第3号  2004年1月30日(金) 午前11時開議 目次

津村啓介HP


本日の会議に付した案件


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田野瀬委員長
これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津村啓介君。


津村委員
おはようございます。民主党・無所属クラブの津村啓介と申します。よろしくお願いいたします。

議題でございます平成十四年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案につきまして御質問いたします。

私は、現在の政府、日銀によるマクロ経済政策運営において、いわゆる出口戦略が明確になっていないケースが多く、国民の将来不安の一つの大きな背景をなしていると考えております。言いかえれば、現在の深刻な危機が、どのような条件が満たされたときに克服されるのか、そして、どこに危機克服の出口があるのか。本日は、現在の政府、日銀によるマクロの経済政策運営において随所に見られます、こうしたさまざまな特例的な措置と、異例な政策の出口を明確にすることを一つの底流的なテーマ、キーワードとしながら、以下、具体的な質問を進めてまいります。

一つ目の質問でございます。財政法六条一項の立法趣旨についてでございます。

私の手元にある資料によれば、平成十三年十一月十三日、前回、同様の法案が審議された衆議院財務金融委員会での質疑におきまして、当時の自由党鈴木淑夫議員の質問に対しまして、当時の塩川財務大臣は、財政法六条一項の条文のねらい、法の精神は、「終始一貫いたしまして、それは国の財政の健全化を守る、この一点だと思います。」こう極めて断定的に述べておられます。この点については、谷垣大臣、現在でもこうした理解でよろしいのでございましょうか。


谷垣国務大臣
今、津村委員おっしゃいましたように、塩川大臣の御答弁と私も同じ考えを持っております。

財政法六条については、申すまでもございませんけれども、公債及び借入金の償還財源として決算上の剰余金の一部を基金に入れるということで公債の償還を確実ならしめようとした趣旨である、それを大きく言えば、塩川大臣のおっしゃったような表現になると思います。


津村委員
大臣、ありがとうございます。

国債整理基金への繰り入れにより将来にわたる償還財源をプールするという形で財政の健全化を進めるのが、本来の、いわば原則であります財政法六条一項が想定する原則的な世界、そういう御答弁かと思います。

一方で、今回の法案でございますが、その趣旨説明におきまして、谷垣大臣は、国債の発行を極力抑制する観点からと御説明をなさいました。これも実は、突き詰めれば、財政の健全化をゴールにしているという点では財政法六条一項と同じゴールを設定している、そういうふうに理解できるかと思います。結局のところ、特例措置をとってもとらなくても、財政健全化のための効果、そういう観点では、若干の手続的なコストはともかくといたしまして、基本的には同じゴールを設定しているということかと理解しております。

であるとすれば、同じ財政健全化を目的とした二つの政策オプションのうち、どうしてわざわざ特例措置を設けてまで新規の国債発行の抑制にこだわるのか、なぜ国債整理基金への繰り入れではだめなのかをお聞きしたいと思っております。

少しお話ししたいんですが、例えば、これがもし、株主からのチェックが正常に働いている、節度ある民間企業であれば、多額の借金を抱えた状態で前年度の決算に剰余金が発生すれば、まずストックベースでの債務を減らして、そして利子負担を軽減していこう、こう考えるのが普通の企業財務の考え方ではないかと思います。余ったのだから使っちゃおう、そういうことであれば、その場では見せかけのゆとりが見えますけれども、しかし、それは借金の返済が後回しになる一方ですので、これは健全な財政の姿とは言えないのではないかと考えるわけです。

以下、私の見方でございますけれども、結局、例の、小泉さんいわく大したことのなかった、三十兆円枠の公約の幻影を今でも引きずって、新規発行額、つまりその年単年の借金の表面的な金額だけを気にして、より本質的な部分を隠している。すなわちこれこそ隠れ借金そのものだと思うわけでございます。もし私の理解が不正確なのであれば、なぜ、同じ効果しかないのにわざわざ特例措置を設けるのか、合理的な説明をお聞かせください。


谷垣国務大臣
今津村委員がおっしゃいますように、この二つのオプション、どちらをとるかによりまして、もちろん、手続的に、例えば利息がどうなるかとかいう小さなところでは違いがありますけれども、大きな意味では変化がない、同じ効果であるというのはそのとおりだと思います。

その中で、なぜ、こういう法律をつくって、基金には入れないでやっているかということになりますと、結局、今の財政事情にかんがみた場合、予算編成に当たって、国債の発行を極力抑制していく、そのことが一番大事じゃないかという方針を立てたわけであります。それはやはり、これだけ大きな国債を発行しておりますと、流通している国債に対する信認を維持していくということがまず考うべきことではないかな、このように考えまして、今回のような措置をとったということでございます。


津村委員
三番目の質問は、実は今のお答えに大変深く関連するんですが、国債の信認が一つの問題というか、重視しているというお話でございました。

私は、国債の信認を高めるためにも、どういう原則で財政政策運営がなされているか、その中期ビジョンといいますか、先ほど私が使った言葉で言えば、出口戦略までしっかり明確にしておくことがまさに国債の信認を高める上で非常に重要ではないかと思うわけです。

今回の法案のタイトルには特例という文言が入っておりますが、実際には、過去二十年間で八回、平成十一年以降はほぼ例年のように特例措置が続いておりまして、そもそもどっちが原則でどっちが特例なのかということがはた目にはわかりにくい状況になっている。もう少し言えば、現在の財政事情を考えれば、今後とも剰余金の処理に当たって同様の措置が繰り返されるのではないか、そういう素地が続いているのではないか、そういうことも言えるかと思います。

例えば、政府の見通しによれば、財政健全化と大変深くかかわることですけれども、例のプライマリーバランスの黒字化まであともう十年近く、明確な年限は出ているのか出ていないのかちょっとこの間よくわかりませんでしたけれども、そういった想定がなされているというぐあいですから、この間、十年近くの間、決算上の剰余金が生じた場合やはり今後とも一般財源への繰り入れが続くと、予見可能性を持ちたいわけですからそこを、今後のことを知りたいわけですけれども、今後とも条件が変わらなければこの繰り入れが続くと考えるべきなのか、それとも小泉さんの気持ち一つで変わるようなことなのか、そこを、考え方を示していただきたい。

もう一度繰り返しますが、いかなる条件が整えばこの異常な特例措置が回避されまして、財政法六条一項が描く原則どおりの世界、姿に戻るのか、この特例解除の条件を出口として示していただきたいと思います。


谷垣国務大臣
剰余金の処理については、六条、こういう規定がございますけれども、これで行っていくのが法律上の基本であるということは私は変わらないと思います。

しかし、現在の大変厳しい財政事情でございますので、平成十五年度の補正予算では国債の増発を回避することを優先したということでございます。それで、追加財政需要、どうしてもやむを得ざるものは出していかなければいけないということで、今回のような措置をとらせていただくことにした。

今後どうするのかということになりますと、これは、基本は、先ほど申しておりますように財政法第六条に基づく対応だ、法律上そうでございますけれども、それは私どももそう考えているわけでありますが、そのときそのときのやはり国債をめぐる状況等あるいは経済財政をめぐる状況等というものを考えながらやっていかなければならない、こういうことではないかと思います。


津村委員
御答弁ありがとうございます。

続きまして、これもまた大変深くかかわるわけでありますが、いわゆる国債管理政策と呼ばれる分野について伺いたいと思います。多少私の想定よりも時間がありますので、個別具体的な話も交えながらお話をさせていただきたいと思います。

国債残高が大変高どまりしている。あるいはさらにふえ続けている、そしてまた一方で、近年では発行債券の種別の多様化も進んでいるということがあると思います。若干具体的なことを御紹介すれば、平成十一年の九月には三十年債の導入があった、十五年一月にはストリップス債、昨年の三月、やはり十五年三月には個人向けの国債の発行も始まった、そして本年三月からはいわゆる物価連動国債の発行も始まる、そういうふうに聞いております。

こうした日本の国債市場が質量ともに拡大をする、これを成熟と呼んでいいのか、国の借金がふえているわけですからなかなか表現は難しいですけれども、いずれにいたしましても、この市場が拡大している中で、それに応じて、発行体としての、資金調達主体としての政府、財務省サイドがいわゆる国債管理政策の質的な高度化を進めていかなければならない、これは一般論でございますが、そのように考える次第です。

もう少し具体的に申し上げますと、将来の利子負担を軽減すること、これが非常に重要ですし、また、円滑な国債の消化、安定的な消化を確保する見地からも、国債、JGBという商品とその市場を熟知した、そして、どうすれば資金調達コストを最小化できる、つまり税金のむだ遣いを減らすという話ですけれども、こうした知識と経験を持った、高度なファイナンス理論を自在に操ることのできる人材の確保、場合によっては民間の金融市場の方も含めて、そういった方々の登用が今後ますます重要になると考えるわけです。

少し御紹介いたしますと、私ども民主党の海江田万里委員は、やはり前回このテーマについてこの財務金融委員会で議論が行われました平成十三年十一月の際に、いわゆるデットマネジメント、国債管理政策ということだと思いますが、これを専門に扱う独立した部署、これは欧米であればあるんだ、どうして日本はこれだけ国債発行残高があるのにそうした部署を設けていないんだ、あるいは設けているのか、そういうような質問をされまして、そのときの答弁はちょっと引用するほど中身が具体的になかったものですから引用いたしませんが、今回、今くしくも来年度の予算、人員が審議される、そういう時期でございます。

今後、財務省として、国債管理政策の強化策について、とりわけ人的な側面からどういった陣容の強化、これをお図りになっているのか、できればぜひ金融市場の皆さんに対してアピールをしていただければと思います。


谷垣国務大臣
津村さんから、国債管理政策に対して大変明確な御指摘があったと思います。

国債管理政策をやっていきます場合に、いろいろな技術的な問題がもちろんあるわけでありますが、そのまず第一番の前提は、財政当局として財政規律というものをやはりきちっとやっていく、財政規律に対しての堅固な意思を持っているんだということをやはりいろいろな機会に示していくということが一番基本中の基本なのではないかと思っております。これは今の財政上ではなかなかその辺は簡単なことではありませんけれども、先ほどちょっとお触れになりました、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを回復していくんだ、そういう意思、方向性をあらゆる機会に示していくということがまず一番大事かな、このように思います。

その上で、今委員が御指摘になりましたように、中長期的な意味から、コストの増大を抑制していく、そういうことを基本としながら確実かつ円滑な消化を図っていくのが一番基本的な考え方ではないかなというふうに思っております。

そういうもとで、市場のニーズとかあるいは動向といったものを十分に踏まえて国債発行を行う、それから国債市場のインフラ整備というようなことも考うるべき点がたくさんあるのではないか、そういうことを考えまして、昨年の十二月三日に「国債管理政策の新たな展開」というのをまとめまして公表させていただきました。委員が今御指摘になりましたように、こういう国債管理政策を遂行していく、その体制というものの整備、これにやはりかなり力を入れているところでございます。

具体的に申しますと、その機構として、国債を担当する国債担当審議官それから市場分析官というポジションを新設する。それから、今までは国債課というものがございましたけれども、これを二つの課に分けまして、国債企画課それから国債業務課と二つに分けて充実させていく。それから、定員としても、国債関係課の人員、今まで四十八名でございましたけれども、これを五十三名にふやすということをしております。それから、市場分析官というのを新たに設けるわけですが、これは、市場動向等の分析のノウハウを新たに導入するために、専門的な経験、知識を持った民間の方を登用して、その方向を充実させていきたいというふうに考えております。ことしの七月から実施することを予定いたしております。

今後、こういう体制の整備も含めて、先ほど申し上げた「新たな展開」でお示しした方向をきちっと踏まえながら、国債の円滑かつ確実な発行というものに、それから国債市場の安定という方向に努めてまいりたい、こう思っております。


津村委員
御丁寧な答弁をありがとうございました。

これは私個人の意見でございますが、少しだけ申し上げますと、民主党の立場といいますか、国民の声を代表しながら税金のむだ遣いをなくしていこう、そういうことは厳しく予算審議等で私ども唱えておりますし、細かいところも含めてしっかりチェックをしていきたい、そう思っております。

それが大前提の上で申し上げるわけですが、やはりそうはいいましても、めり張りのある人員配置あるいは予算ということをしていただければいいわけで、国債管理政策というのは私は大変重要な問題だと思っております。そうした中で、今のお話、大変よくわかりましたけれども、今後とも国債市場をしっかりと見据えながら国債管理政策を行っていただきたい。そういう観点から、必要であれば、しっかりと人と物と金と情報、そういったものを谷垣大臣のイニシアチブのもとでマネージしていただければ、そう思う次第です。

以上で谷垣大臣への御質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。

多少時間の配分が、私、自信がないものですから、少し順番を変えて一つ……(発言する者あり)はい、わかりました。

農林水産省から、金田副大臣でしょうか、来ていただいていると思います。一点御質問を先にさせてください。

今回、二つの法案について審議しておる中で、農業共済再保険特別会計の農業勘定における平成十五年度の再保険金の支払財源の不足に充てるために行う積立金の歳入への繰入れに関する法律案について、一点でございますが、お聞かせください。

昨年の冷害、これに対して、農家の皆さんが非常に深刻な被害を受けている。そうした中で、今回、私ども、補正予算に対してはまた別途の考えもございますが、この法案については、これは前向きに検討しなければいけない大変重要なテーマである、そういうふうに考えているわけです。

そしてまた、農家の皆さん、私はいろいろな方からこの間ヒアリングをさせていただいたんですけれども、年内に共済金を受け取ることができるかどうか。これは、前回の、平成五年の例のタイ米を緊急輸入したとき、あの大変深刻な冷害の際にもやはりあった事例ですけれども、年内に共済金が欲しい、そういうニーズが大変大きいというふうに聞いております。

その措置というのは現在とられているんでしょうか。それとも、この審議が進んでいかなければ、農家の皆さんはさらに苦しんでいる状態が続いている、そういうことなんでしょうか。これはどちらでしょうか。


金田副大臣
昨年の干ばつ、そして日照不足、冷害というようなことで、水稲を中心に大変な被害がありました。全国で作況指数が九〇ということでございます。特に北海道は七三ですか、東北地方も大分被害がありまして、八〇ぐらいの作況指数ということでございます。

それで、この対策で農林水産省で対策本部を設置させていただきまして、共済金をなるべく年内に払おうというような対策を講じさせていただいております。そのほかにもいろいろな融資制度等々の対策を講じておりますが、とにかく年を越す前に払っていただきたいという農家の皆さん方の期待にこたえるために、つなぎ融資というようなことで、今、共済金が千百八十億ぐらいですけれども、ほとんどが、そのうちの一千億ほどのお金が水稲でございまして、これについては年内に支払うように措置しまして、大体水稲については全額の支払いが終わっていると思います。これから、畑作物について、損害額が確定し次第年度内に支払えるように対策を講じているところでございます。


津村委員
具体的な御説明をありがとうございます。

私、確認ということで御質問させていただきましたが、少しだけですけれども勉強したところ、水稲について年内に基本的に支払われている、そして、仮払いですから、少しその間時間がかかった分、利子負担がこれは発生する、それが補正予算に二億円程度計上されていると聞いておるんですが、必要な措置でないかと思っております。

そうした中、今、畑作物というおっしゃり方をいたしましたけれども、大豆等の件については、まだ損害額が必ずしも正確に算定されていないということもあって、いまだ執行が進んでいないということでありますが、やはり大変重要な問題と思いますので、こちらが遅滞なく措置されることを、これは個人的ですけれども、希望いたします。引き続き努力を重ねていただければと思っております。


金田副大臣
まさに、この共済金の支払い、なるべく早くという農家の皆さん方の要望にこたえるために、水稲については大体支払いが済んでおります。あと、百億ほどの畑作物共済金の支払いでございますが、損害額を確定し次第払わせていただきたいということでございます。

これは、つなぎ融資ということで、民間の金融機関から金を借りているわけでございまして、この法律をなるべく、一日でも早く通していただきまして、そうすると、また利息分が安くなるわけでございますので、どうかよろしくお願いします。(発言する者あり)


津村委員
私も、臨時国会をやっていればというのはそのとおりだと思います。

それでは、続きまして、遠いところを来ていただきました福井日銀総裁に御質問をさせていただきたいと思います。先般の追加的な金融緩和についての御質問でございます。

質問の趣旨ですが、今回の措置につきまして、一部市場参加者からは、そもそも今回の政策変更の背景には、量的緩和政策の効果に対する福井総裁御自身の認識の変化があったのではないか、そういった見方をする向きもあるようでございます。

ここは正確にお話をするべきだと思いますので、私も少し具体的な資料を探してまいりました。お配りもさせていただきましたので、一部は読み上げさせていただきながら御紹介をいたします。

まず一つですけれども、こちら、BNPパリバ証券というフランス系の証券会社がございますが、こちらでウイークリー・ボンド・ストラテジー、ウイークリーですから毎週出ているんだと思うんですが、こちらは英語にも訳されて、海外の投資家にも広く読まれているレポートだと聞いております。

こちらの中に、これはもう皆さんのお手元にはあるんですが、御紹介させていただきますけれども、ここで、総裁記者会見の文言を引きつつ、総裁のコメントに対して次のように論評しています。

「デフレ・スパイラルの防圧に貢献したことから、経済の立ち上りにも役に立つだろうと説明している。ついに日銀は量的緩和の効果を積極的に認めたのである。そして、まさに、ここに論理の飛躍がある。流動性供給による金融システム不安の沈静化と、資源配分の効率化によって達成されるべき経済体質の強化はまるで違うはずだ。」少し略しますが、「福井総裁自身の本意であるか否かはともかく、日銀(或いは賛成に投じた七名の審議委員)は、また新たな領域に踏み出した。或いは、そうせざるを得なかったと見るべきであろう。」。

これだけでなくて、そのほか、追加緩和措置が発表された翌日の一月の二十一日の新聞各紙にも同様の指摘が見られまして、今回の日銀の追加緩和については、市場との対話、これまで福井総裁が昨年三月に就任されて以来大変努力をされてきたと思うんですけれども、この市場との対話という部分で若干配慮不足があったんではないか、そういった論調が一月二十一日の報道に大変目立ったのが残念でございます。

例えば、「日銀はこれまで「量的緩和はデフレ解消の効果は薄い」と主張しており、突然の「路線変更」には、市場を始め、日銀内部ですら、戸惑いの声が出ている。」これは朝日新聞でございますが、こう報道されております。

引用が長くなりましたので、最後にいたしますが、こうした市場の戸惑いにつきましては、実は本日日経新聞にも報道がありますが、日銀の審議委員であります田谷さんが、昨日の京都市内での記者会見において、市場との対話の至らなかった面として次のように認めております。私の手元にあるのは昨日の午後にブルームバーグで配信をされました記事ですので、そこからの引用ということで読み上げさせていただきます。

田谷審議委員は、今回の決定について、私はマネーサプライをふやすために行ったとは思っていないが、そう思っている人もいる、為替のためにやったと思う人もいるし、量的緩和の効果を誤って解釈している人もいる。少し略しますが、ある行動をとった後、誤解を含むさまざまな解釈が出てくること自身、我々のコミュニケーション、政策が、我々というのは日銀ということですが、我々のコミュニケーション、政策が不十分であることをあらわしていると思う、もう少し、何をやるにせよ、市場との対話をもっと図っていく必要があると思う、こう日銀の田谷審議委員が述べておられます。

本日、大変御足労いただいておるわけでありますけれども、言うまでもなく国会の場は国民との対話の場でありまして、また、金融市場も大変注目をしていると理解しております。ただいま御紹介いたしました、ついに日銀は量的緩和の効果を積極的に認めたとか、日銀は新たな領域に踏み出したとか、突然の路線変更、こういった受けとめ方が本当に正しいのか、もし仮に誤解であるとすれば、量的緩和政策の効果に対する福井総裁のこれまでと変わらない御評価と、今回の政策変更の正しいねらいについて、この場を通じて、私、多少時間がございますので、改めて説明をしていただきたいと思います。

私は、あと十分時間がありますが、もう一つ御質問を用意しております。


福井参考人
お答えを申し上げます。

少し長い御質問をいただきましたので、答弁も若干長くなることをお許しいただきたいと思います。

まず、日本銀行の一貫した政策姿勢を申し上げます。これは、CPI、つまり消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまで現在の超緩和、量的緩和の枠組みを維持する、そして情勢の推移に応じて必要な補強措置を講じていく、これが一貫した政策姿勢でございます。

ただ、日本銀行を取り巻く金融経済情勢は刻々と変化をしております。刻々の変化、しかし、大きくとらえますと、私どもの感覚では、昨年の夏ごろまでは、経済が、どちらかというと、ともすれば落ち込もう落ち込もうとするような環境でございました。幸いにも、昨年の夏過ぎ以降は、経済が少しずつ上向きの方向に、いわばいい方向に局面変化をした、こういう状況でございます。

日本銀行の基本的な政策スタンスは、消費者物価指数が安定的にゼロ%以上になるまで、どんな局面変化があってもこれを貫くということであります。政策姿勢は一貫しておりますが、局面はいい方向に変わっているということでございます。

したがいまして、政策運営をいたします心構えとしては、昨年の夏ごろまでは、落ち込む経済に対していかに下支えするか、こういう気持ちで政策運営に当たる。そして、昨年の夏過ぎ以降、特にことしになりましてから、将来展望が少しずつ明るくなっております。せっかく出てきたこの新しい芽を大事に育てていく、こういう気持ちに気持ちは切りかわります。しかし、一貫した政策姿勢は、CPIが安定的にゼロ%以上になるまで断固今の枠組みを続ける、そして、情勢の変化に応じて、必要とあらば追加措置も講ずる、この姿勢でございます。

現在の状況に即して申し上げますと、景気は確かに緩やかに回復をしておりまして、先行きにつきましても、当面景気が後戻りしてくる心配はない、これは非常に歓迎すべきことだと思っておりますが、ただ、回復テンポは、まだ過剰債務など構造的な問題が多々残っておりますもとで、緩やかなものにとどまる可能性が強いと私ども判断しております。私どもが注目しております物価情勢ですが、これも、下落傾向というものは少しずついい方向に改善しつつあるというふうに思っておりますが、消費者物価指数の動きを見ておりますと、基調的にはなおしばらく下落基調をたどる、つまりデフレ脱却の展望はなお容易につかみにくいという状況にございます。

したがいまして、こういう状況のもとでは、我々の持てるフレームワークのもとで、景気の回復をより確かなものにしていくための必要な措置というものはタイムリーにやっていかなければならない。それに加えまして、金融・為替市場の動向を見ておりますと、折に触れ、長期金利あるいは為替の動きが不規則な動きをする、そうしたことが、経営の最先端に立っておられます企業経営者の心理状況をどういうふうに巻き込むかというふうなことについても注意深く見ながら、政策対応をさせていただきたいということでございます。

量的緩和の効果でございますけれども、今申し上げましたとおり、消費者物価指数の基調は少しずつよくなっている。指数で申し上げますと、あと〇・幾らのマイナスの物価じゃないか、こういう感覚をお持ちになるかもしれません。しかも、景気が少し上向いてきたからには少し気楽に見ていいんじゃないかという気持ちが、ひょっとしたら経済界全般に少しずつ出始めているかもしれないと私どもは思っておりますが、しかし私どもの認識は、残り〇・幾らのデフレを克服していく道、つまりこの最後の一マイル、ザ・ラスト・ワン・マイルはなお非常に厳しい道だ、これが私どもの基本的な認識でございます。

この道を克服していくそのプロセスというものは、引き続き、企業部門もそれから金融部門も、やはり、リストラの努力をさらに進めていただきながら、新しい価値創造の過程に早く入っていただかなきゃいけない。そのことを、我々が提供する非常に緩和的な金融条件、金融環境というものをフルに活用しながら、さらに前進してほしい。つまり、構造改革のさらなる前進、経済全体としては持続的な成長軌道への復帰、この道筋と金融緩和の効果との相乗効果をより強く出していくことが、唯一、この残り一マイルの厳しい道を乗り切っていくルートであると私どもは確信しているわけでございます。

量的緩和の効果というものは、もう御承知のとおり、流動性をたくさんマーケットに供給することによりまして、短期金利のみならず期間の長い金利についても極力低位に抑えて、企業及び金融機関、特に企業にとっての資金コストを常に最低限のものに抑える、信用スプレッドについても、非常に幅の狭い、低位なものに抑えて、金融環境を企業にとって有利なものにしていくということのほかに、金融市場あるいは我が国の経済にはさまざまなショック要因が今後とも舞い込んでくると思いますが、そのショックを金融市場の中で極力速やかに吸収してしまう、そういう安定的な金融環境を企業に提供することによりまして、今後とも、リストラ、さらにはより前向きに価値創造に向かっての新しいビジネスモデル構築を支援してまいりたい、こういうことでございます。

経済が落ち込む、ともすれば落ち込もう落ち込もうとする昨年夏ぐらいまでの状況にあっては、こうした私どもの量的緩和のフレームワークというものは、落ち込みを下から支えるという意味で、つまり、経済がデフレスパイラルに落ち込んでしまうということを強力にサポートしたと思います。今度は、経済が前向きに動き始めましたら、その下支えしていた力は、これに伴って後押しをしていくという力になるわけで、表現は、下支えから後押しというふうに変わるといたしましても、金融緩和の効果、実態的な効果そのものは何ら変わりがない。

私どもの姿勢も量的緩和の効果も変わらない、これは消費者物価前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまで貫き通す、こういうことでございます。


津村委員
今、大変明確な御答弁があったと思います。これまでの、心構えというお言葉を使われましたが、心構え、そして、量的緩和の実態的な効果は何ら変わっていないという明確な御答弁を得られたと思っております。

まだ少しだけ時間がございますので、多少重複いたしますが、量的緩和政策の出口戦略について、今回は短くて結構ですので、伺わせていただければと思います。

なぜそういう御質問をいたしますかといえば、内外に大変不確定要素が多い中で、確かに現時点で出口論を論ずることは大変難しい。これは福井総裁も記者会見等で述べられております。おっしゃるとおりですが、しかし、現在の短期金利がほぼゼロ%で固定的に推移している中で、将来の短期金利への期待に働きかける、いわゆる期待形成を通じて、長期金利の安定、ひいては実体経済への直接間接の波及ルートを確保することが日本銀行の政策運営において決定的に重要な意味を持つもの、そう考えるわけです。

今回の追加緩和直後の国債利回りの推移を見ましても、まだまだ一週間しかたっておりませんし、その他さまざまな要素があります、余り乱暴なことをここで議論するのは差し控えたいとは思うんですが、そうはいいましても、五年債の利回り、十年債の利回りは、ちょっと済みません、細かい数字がありませんけれども、グラフにして見てみても、ほぼ五年債、十年債は横ばいの中、二十年債についてはやや上昇、強含みというような姿もございます。今回、時間軸効果を延長したという理解もあるわけですけれども、これは、期待されているそういった結果には、期待形成にはつながっていない。

そういう意味でも、まあ失敗と断ずることはできませんが、対話不足が若干あるのかなというような気がしたものですから、今後の、今まさに総裁がおっしゃられた、消費者物価指数の安定的な前年比ゼロ%以上での推移、こういったものを実現するパスといいますか、具体的なこれからのシナリオ、あるいは、その途中で、この間、日銀の政策手段というのは随分当初の予想より拡大してきたわけでありまして、それは一つ一つ理由があるとは思いますけれども、今後の予見可能性という意味でも、残された、あり得る政策手段も含めて、今後の出口戦略を伺いたいと思います。よろしくお願いします。


福井参考人
ただいまの御質問に対しましては極めて簡潔にお答え申し上げるということでお許しいただきたいと思いますが、と申しますのは、出口戦略の詳細を申し上げるには余りにも時期尚早だという点が一つございます。

ただし、将来におきまして、この量的緩和のフレームワークから通常の金融政策のフレームワークに切りかえていく、いわゆる出口戦略というのは非常に重要だという点は同時に強く認識をいたしております。

CPI、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまでというものは、私ども、当面の非常に重要なゴール、目標といたしておりますけれども、消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%以上になれば、すぐ、均衡ある、将来望ましい日本経済の姿になるかどうかということとはまた別問題。その先、本当に均衡ある日本経済の姿、いわゆる最終的なゴールに行くまでさらに距離があるかもしれないというふうに思っていかなきゃいけないと思います。したがいまして、そういう意味では、消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上に達するというのは、一つの通過点であるかもしれないということでございます。

ともあれ、まずこの通過点に早く達しなきゃいけない。そして、通過点が来た以降の問題については、より望ましい、均衡のとれた日本経済に向かって我々としても金融政策はきめ細かく運営していかなければいけないと思いますが、重要な点が幾つかあると思います。

一つは、量的緩和のフレームワークのもとにおきましては、効果もねらっておりますけれども、コストも払っている。つまり、金融市場の機能をかなり犠牲にしながら金融政策の運営をしておりますので、金融市場の機能回復というものを図りながらその後の金融政策は運営しなければいけない。それから同時に、先ほど委員も御質問なさいましたけれども、国債発行残高というものが非常に累増しているという前提条件のもとでその後の金融政策もやっていかなきゃいけない。したがいまして、国債管理政策と金融政策との整合性ということを十分図りながら、安定的な市場運営を図っていく必要がある。

大まかに言いますと、そういう大きな課題が頭に浮かびます。詳細は、これからじっくり勉強していくことだというふうに思っております。


津村委員
最後に一言だけ申し上げます。

もう時間がありません、詳細を御紹介いたしませんが、本日朝の日経新聞等の報道によれば、日本銀行は本年七月からかなり大胆な組織改革を行うというような報道がなされておりました。課制、局、課とあるわけですけれども、その課を廃止するといった、かなり大胆な改革案だと思います。

この間日本銀行が経営合理化の努力を続けていると、この間平岡議員の質問に対して予算委員会でお答えになっておられました。そういった努力があること自体、私、事実として知っておりますけれども、今回のような、若手の登用あるいは組織のフラット化、こうした、組織を活性化していくという努力が同時に行われなければ、経営合理化だけでは組織は活性化されません。組織の士気あるいはモラールといいますか、そういったものが低下することが大変心配されるわけでございます。ぜひ、こうした前向きな努力をこれからも続けていただければと思います。

そこはエールを送らせていただきまして、そしてまた、先ほど、終始一貫して変わらぬ量的緩和への評価と、非常に明確な御答弁をいただいたこと、大変有意義であったということを申し上げて、私の御質問を終わります。ありがとうございます。


財務金融委員会 第3号  2004年1月30日(金) 午後10時51分散会 目次

津村啓介HP